20220928 【INTERVIEW】「何もしない」時間を大事にすごす。「余白の庭」が完成しました

なかむらは自宅内にあるスペースでマンツーマンのプライベートクラスを開いています。(完全予約制)

受講者の方とお話ししながら、そのときの身体の状態に応じてヨガやピラティス、ストレッチを取り入れる、

自分の身体と心に向き合うための時間です。

そうして身体を「ゆるめる」ための時間を、クラスの前後にも過ごしてもらいたいと

このたび新たに「庭」をつくりました。

きっかけは、なかむらがあるお庭を訪れたときに感じた「ここにいてもいい」と思える安心感を

持ってもらいたいと思ったこと。

そのお庭をつくった作庭家の根岸新さんにお願いして、実現することができました。

なかむらのリクエストを、どんなアプローチでかなえてくださったのか?

根岸さんのお話とともに、お庭をご紹介します。

身体の状態がまったく変わる空間

くるみ:初めて根岸さんに会ったとき、かき氷の氷を削っていましたよね。2021年の6月くらい。

根岸:お庭をつくらせてもらったBED AND CRAFT「RoKu」でイベントがあったときですね。

くるみ:宿泊施設という衣食住の空間の延長線上に、こういうコンパクトなお庭があるというのが

素敵だなと思いました。一歩踏み入れると違う世界に迷い込んだようで、身体の状態がまったく変わるなと。

目の前で生きている植物や空間に触れられて、「ここにも水が流れている」「見たことない色の花が咲いている」と

普段とは違う感覚で、ある意味での情報過多になるというか。新鮮でした。

自然の情報をどう受け止め、身体をどう動かすか?とそこで考えていたのを覚えています。

気持ち的にもペースダウンできて、それが身体ともリンクしてスイッチを切り替えられたんです。

根岸:その庭で使った足もとの材料は、本来なら足もとに使うような材料ではないんです。

石積みの塀で使われていたようなもので、丸みがあってぼこぼこしていて。

それが目で見ても、足元で感じても面白いし、宿は毎日使う場所ではないこともあって取り入れました。

飛び石には、リズムを落ち着かせる役割があるんです。

茶室に通じる庭でも使われて、向かいながら自然とリズムが整うようになっています。

平坦な道より、「歩く」ことに意識が向くと思います。

くるみ:確かに不安定だったのを覚えています。その歩きにくさがよかった。

どこを踏もうか?というような。

根岸:先輩にも、もう少しなめらかにしたほうがいいと言われました(笑)。

庭師はみて学ぶ世界なので、技術面で教わることはあってもデザインの面では皆それぞれで、細かく教わるわけでは

ないんです。

たとえば親方のやり方で「枕木を平行に置く」というのがあったら、そこから発展させてじゃあ自分は何をする?と

考える。

何かアクセント、ひとひねりを加えて個性を出したいと思っています。

今回の場合は、このタイル。

どうやって見せるのがいいのかすごく悩んだんですが、くるみさんと出会ったイベントに参加されていた作家の

前川わとさんのタイルということもあって、使いたかったんです。

くるみ:ダンスでも「この動き」「この演出」というのが最初に浮かぶことがありますが、それをどこで、どういう

構成で、どんな効果で置くかは最後まで迷ったりもします。

いいと思う要素を用意はしてるけど、どう出すか?で悩みますね。

根岸:それに縛られながらやるのも違いますしね。自分のこだわりをどこまで貫くか……。

「余白」のある時間

根岸:今回も取り入れている、山に自然に生えるような雑木の庭というスタイルは師匠に教わって、今主流に

なりつつあるんです。

そのための素材も手に入りやすくなっていますが、ただ植えるのでは本当に植えた「だけ」になってしまう。

やはりどこで自分を出すかをいつも考えます。

自分の場合は、足もとを作りこむということ。

今回はプライベートクラスのユーザーさんがクラスの前後に過ごす以外も、くるみさんが朝、余裕があるときに

庭におりてリラックスしてもらえたらというイメージだったので、ある程度平らで、木に囲まれる感じ……と

だんだん固まっていきました。

眺めてもらうというよりは、座っていると木と一体になれる、山に入ったような気になれるというような。

ふと見上げたとき、後ろに木が寄り添ってくれているように感じられると落ち着くかなとこの配置になりました。

この庭は、何をするというわけではなく「ただぼーっとできる時間を大事に過ごす」ことができる場所という

お話だったので、主役は植物ではなく庭を使う人。

足元の草花も、あまりいろんな花が咲き乱れて主張しすぎているのも疲れてしまいますよね。

そういう庭をつくることもありますが、ここはそうではないなと。

くるみ:余白のある時間を過ごしてもらいたい、というお話をしていましたよね。

身体も、何から整えるかというと足もとから整えるんです。足がどんなふうに地面に接しているか、どこに偏って

いるかなど、下から積み上げていくように身体の確認をします。

だからこのお庭をレッスン前後や別の日にでも使ってもらうことで、それが確認できる。

地に足が着いている、落ち着いているという状態の「グラウンディング」ができているとき、身体がどう感じるのか

を知ってもらいます。

私は朝、陽が出ているときにここで呼吸したり、本を読んだりして過ごすのがグラウンディングになっています。

足もとが物理的に不安定だと、精神的にも不安定になりがちですよね。

ヨガは座って呼吸を大切に、自らを内観するということが根幹にありますが、あれだけいろいろなポーズがあるの

は、あえてバランスをとりにくいポーズを練習することで集中力が高まったり、肉体=まずは外側を自分でコントロ

ールしながら、よい塩梅で使えるように練習する中で内側へ向く意識も高まっていき、内面を整えることにつながる

からなんです。

内面を整えるのは難しいから、まずは足もとから安定させて、「身体を使っている」状態にある自分を経験すると

いうイメージです。

「帰ってくる」場所

くるみ:「Roku」のお庭は、宿である以上いつかはそこを離れて家に帰らないといけないし、それを見越してつくっておられますよね。

ここだと、クラスユーザーさんの場合は月に1回は「帰ってくる」ことになります。

これまでは1時間~1時間半でクラスを提供してきましたが、もう一押し何かプラスアルファとして、ここにいて

いい、そのままでまったく問題ないと思える場所で、「外にいる」という原始的なやり方で自分の身体と向き合うと

いうことができないかなと思うようになりました。

ユーザーさんは40代女性が中心ですが、常にやるべきことでフル回転していて、皆そんな空間がほしい!と思いつく

ことも無いかもしれません。

家でも横にならない、休まらないという方たちにとって自分のことを許容してくれる場所にできたらと思いました。

何もしなくてもただ「ここにいていいんだ」と思える場所の必要性を、切実に実感しています。

クラスを始めるとき、ユーザーさんにまず今日の自分はどうか、最近どんな感じか、ということをお聞きします。

自分の状態に目を向けずに、地に足が着かない状態でエネルギーが外にばかり向かって中がからっぽになってしまう

ということも多い中で、身体のことを自分で話せるようになっていくのも大事なプロセスの一つ。

身体のことをわかって、許したうえで、何ができるか。

治癒するわけではなく、あくまで自分の身体と向き合った上で必要なトレーニングや呼吸法、リラクゼーションの

体勢などを提案しています。

自分で自分のことを知る時間を重ねているという感覚です。

根岸:話を聞いてもらいたいとしても、アドバイスがほしいわけじゃないこともありますもんね。

自分の「心地よさ」を追求する

根岸:独立してからは、すべてが自分の責任になる一方で、気楽な面もあります。

庭を持ちたいという方は皆さんものの考え方や大事にしていることが面白くて、お客さんから学ぶことが

ものすごく多いんです。

庭ごとにコンセプトやデザインがまったく異なるのは、お客さんからの助言があるからこそで

何よりもお客さんから勉強させてもらっていると、独立して感じています。

まずは自分が心地よいデザインを目指して何度もやり直して、自分の中でハードルを上げることで

お客さんも納得してくれるんじゃないかと思っています。

人の評価とかはそこまで参考にならないというか、やはり自分の心地よさ、そこに至るまでのお客さんとの

やりとりが大事だと思っています。

「余白の庭」は、今後プライベートクラスのユーザーさんを中心に開放していきます。

詳細については

sokonidance@gmail.comまでお問合せください。

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